第13章

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「急にごめんね。今大丈夫かな?」 ユーフェンは扉のノブに手を掛けたまま彼女の返事を待つ。 断られたら潔く引く覚悟なのだろうが、彼女は勢いよく首を縦に振った。 「うん、大丈夫だよ!」 あまりの興奮にユーフェンは少し驚いた表情を見せるも、おかしそうにクスクスと笑った。 「そう、良かった。なら僕の部屋へおいで。一緒にお茶しよう」 「うん!」 リオンが彼の近くに行くと、にっこり微笑んで手を差し出すユーフェン。 「お手をどうぞ」 ユイランの手を握っていたのとは訳が違う。 ユーフェンを好きだと自覚してから、これはまさに願ってもないことだ。 「は、はい……」 恐る恐る彼の手に触れると、捕らえるように、けれど優しくその手を捕まえる。 (し、心臓破裂しそう……!) 手から心音が伝わってしまうかというほどに、心臓は早鐘を打っていた。 ユーフェンの部屋に入るのは、今日が初めてだった。 いつも会うときは、リオンの部屋にユーフェンが来る形であったから。 「ここ、座って」 部屋の扉の近くで思わず立ち尽くしてしまったリオンを、ユーフェンは椅子へと促す。 (凄い……) 彼女がそうなってしまうのも無理はなかった。 彼の部屋はユイランの部屋とは違い、リオンのイメージする『王子様の部屋』そのものであったから。 広さはユイランの部屋の三倍以上はあるだろう。 天井は高く、やわらかい光りを放つシャンデリアが吊るされている。 部屋の角には観葉植物が置いてあり、床には金の刺繍が施された赤の絨毯が敷かれている。 美術作品のような真っ白な長机と長椅子。 陽当たりのいい窓際には、ユーフェンが執務をするための机が置かれている。 この机上は書類などが積み上げられていた。 「ごめんね、片付いてないんだけど」 「……え!? そ、そんなことない!」 ユーフェンの部屋を説明するとキリがなかった。 けれど掃除の仕方が良いのだろう、廊下と同様塵一つない。
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