第13章

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(きっとリルさんが掃除してるんだ) リオンは尊敬の念を覚えた。 「……ん? ……あっ!」 「どうしたの?」 彼女はずっと、大きい窓だとばかり思っていた。 等身大の、扉のような。 「ユーフェン、これ……ベランダ!?」 「うん、そうだよ」 目を輝かせる彼女にユーフェンはふっと微笑むと、自らその扉を開けた。 途端に温かい風が室内に吹き込む。 「良かったら外に出てみたらいいよ。僕はお茶いれてくるから」 「ありがとう」 リオンが一歩ベランダに出てみると、そこからは村の様子が一望できるようになっていた。 焼け枯れた自分の家も視界に入る。 (もしもここがユイランの部屋だったら、火薬遊びが見れたかも) ユイランも一緒であるため村へは下りないが、火薬遊びは近くの丘で見る予定だった。 そう、その丘というのは以前ユーフェンとの思い出がある場所だ。 リオンの家近くの丘である。 (あそこなら火薬遊びが見えるし、村人にも見つからない) いわゆる穴場、という所だった。 ぼんやり風景を眺めていると、後ろでカタリと音がした。 「お茶いれたから、中にお入り」 「あ……、うん」 少し名残惜しい気もしたが、言われた通り中に入る。 時計を見ると一六時すぎになっていた。 「あとニ時間半……」 「……え? 何か言った?」 思わず口を突いて出てきた言葉に、リオンは「何でもないよ」と慌てて首を横に振った。 折角ユイランの本心を聞けたのに、ユーフェンにバレてしまっては元も子もない。 「そう」 彼は何か言いたそうな顔をしていたが、リオンは敢えて気付いていないフリをした。 彼女が椅子に座ると、ユーフェンに紅茶を差し出された。 以前とは違った味付けのようで、ほんのりと湯気が出ている。
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