第13章

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嬉しそうにそれを見つめる彼女に、ユーフェンは尋ねた。 「最近、ユイランとはどう? 何もされてない?」 まさか計画に勘付かれたのか、と思ったが、どうやら違ったようだ。 気の荒いユイランの性格をよく知っているユーフェンは、彼女の身をただ案じている。 「あ、うん。前よりは少なくなったよ」 安堵し、口に紅茶を含む。 彼もまた安心したように、ふっと笑った。 「それならいいんだ。君まで怪我してしまったら……」 リオンは紅茶を飲む手を止めた。 ある言葉が引っかかったのだ。 (君……まで?) ユーフェンも自分が言った言葉に驚いており、無意識のうちに口を手で押さえている。 「ユーフェン……、誰か怪我したの?」 言ってからリオンは気付いた。 そういえば、誰かに同じようなことを聞いた気がする、と。 『……誰か怪我を……?』 『犠牲者……恐れている……』 (思い出した、ソルトに聞いたんだ!) ソルトは、リオン以外にも連れ出そうとした人が犠牲者となった、と言っていた。 もしユーフェンの言っている人がソルトの時と同じであったら、その犠牲者の今を知っていることになる。 ふとユーフェンを見れば、墓穴を掘ったような表情をしていた。 リオンはこの時とばかりに、ソルトに聞けなかったことを聞くことにした。 「ねぇ、ユーフェン。その怪我した人は、今はどうしてるの?」 「……!」 「生きてるの?」 どんどん顔が青ざめていく。 僅かながらに手も震えているようだ。 「……死んでしまった方が、楽だったかもしれないね」 「それって……」 死んではいないということ。 しかし言い方からして、今は生きることが危ういということ。
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