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「ユーフェン、ごめん……」
(こんな辛そうにしてるユーフェン、初めてだ)
それからは碌な会話ができなかった。
どんなことを話しても、まるで会話に気が入らないユーフェン。
そうこうしていく内に時間は経ち、気付けば一八時半近くになっていた。
時間が迫ってきたので、リオンはユーフェンの部屋を出てユイランの部屋へと向かう。
ユーフェンの様子が気がかりではあったが、今は目先のことに集中しなければならない。
「ユイラン、行こう!」
ノックもせず部屋に入る彼女に、ユイランは少し驚いたようだった。
「行こうって、どこからだよ」
馬鹿正直に城の扉から出ていけるわけはないし、寧ろ部屋の扉から出るのでさえ誰かに見つかる可能性がある。
それならば。
「まさか……」
そう、そのまさかだ。
彼女はにっと勇ましい笑みを浮かべると、ユイランに向かって指を差した。
いや、正しくはその後ろに。
「窓から出るんだよ」
彼の後ろにある窓。
そこから外を見れば高くそびえる庭の樹木。
「窓からって……ここ三階だぞ!?」
「大丈夫。私が行きたい丘は、ここからそう遠くないから。木の枝も太くて丈夫みたいだし」
自分の部屋でも、ユーフェンの部屋でも確認できた。
この城から村まではあまり遠くない。
近くから火薬遊びを見るつもりもない。
ただ、それを邪魔する樹木を避けられればいいだけ。
「んなこと言って、もしここから落ちたらどうすんだよ」
「大丈夫だってば。下は植え込みがあるし、多少のクッションにはなるよ」
何を言っても言い返してくる彼女にユイランは諦めたようで、軽く溜め息を吐くとリオンを見つめた。
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