第14章

2/11
前へ
/40ページ
次へ
リオンもユイランも、幼い頃は木登りなどしたことはなかった。 二人共、立場は違えど黒の妖精ということが原因で、目立つような行動はできなかったのだ。 けれど今、初めてとは言え、木登りの仕方を知っているかのように足を進める。 それも、立派に育った樹木のおかげとも言えた。 足をかけ体重を預けてもびくともしないこの太い枝は、逞しかった。 二人は夕陽の光を頼りに、目的地を目指す。 「ユイラン、この木の葉っぱ気をつけて。チクチクする」 木から木へ足を移すと同時に、腕で細かな枝や葉をユイランに当たらないように払いのける。 城からリオンが目指す丘までそう遠くない。 だが、彼女の擦り傷は知らず知らずに増えていった。 「あともう少しで着くよ!」 夕陽は徐々に沈んでいき、薄暗い中に月が出ている。 それでも目を凝らし、確実に足を進めた。 そしてついに、目的地に足が着く。 二人は服についた枯葉や小枝を払い、一息ついた。 もう辺りは真っ暗になっており、村の広場に村人が集まっているのがうっすらと見える。 「ちょっと遠いけど、ここから村の空はよく見えるよ」 彼女は「よっこいしょ」と言う掛け声と共に、その場に腰を下ろした。 勿論、鞄は肌身離さず持っている。 柔らかい緑の草が、疲れた足を癒してくれるよう。 「あ、そうだ。大丈夫だとは思うけど、一応これ被ってて」 そう言ってリオンが鞄から取り出したのはニット帽だった。 万が一誰かに見つかってもいいように、できる限りの策である。 「暗いから大丈夫だろうけど、一応ね」 ユイランはそれを無言で受け取ると、言われた通りに被る。 そんな素直な彼の様子に彼女は少し驚くも、ふっと目を細めた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加