第14章

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「ねぇ、ここ座ったら? 疲れたでしょ」 そう言って、リオンは自分の隣へと促した。 しかしユイランは、彼女の座っているところから一人分空けて座った。 (まぁこんなもんか) 今までのユイランの行動からして、今日は進歩だと思った。 返事をしないとはいえ、彼は自分の言うことを聞いてくれているのだから。 二人の沈黙の中、火薬遊びはまだ始まらない。 村では火薬使いの腕自慢達が、打ち上げのための砲を用意しているのが見えた。 (今何時だろう……) ふと暗くなった空を見上げた。 ポツポツと星が瞬いている。 「……始まらないな」 リオンの隣から聞こえた声。 「そうだね」と彼女も静かに答える。 再び流れる沈黙。 それを遮ったのはまたもユイランだった。 「あいつ、知ってんのか?」 何の脈絡もない突然の言葉だったが、彼女はすぐに意味を理解した。 「ううん、ユーフェンには言ってないよ」 (ソルトには言っちゃったけど) ユーフェンはきっと、反対するに違いなかった。 リルやソルトでさえ、躊躇いを見せたのだから。 彼女の言葉にユイランは何も言わなかったが、その無言こそが何か訴えているような気がした。 リオンは少し間を置いてから、静かに聞いた。 「……そんなにユーフェンが嫌い?」 ユイランとユーフェンが話しているところは、一度しか見たことがない。 けれどその時の様子やユイランの言動から、ただ仲が悪いという言葉ではすまされない程だ。 ユイランは彼女を見据えると、吐き捨てるように言った。 「憎んでる」 リオンは背中がゾッと冷えるような感覚がした。 たった一言がいくつもの意味を含んでいるように思われる程、重たく伝わってきたのだ。
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