第14章

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二人は話が前進しないままでいた。 (ユイラン、今何を思ってるんだろう……) 彼女はちらりと横目で見るが、彼は何の反応も示さない。 「はぁ……」 思わず漏らした溜め息。 相手を何も知らないもどかしさ。 それを打ち破ってくれるかのような花が、また空を飾る。 (やっぱり綺麗……) 花が咲くこの瞬間だけは、リオンの様々な想いが流れていく。 「……ん?」 先程の花が咲き終わり、次の花が咲くまでの時間のこと。 彼女は鞄の中で、ぼんやりと光るものに気付いた。 「無線機!」 ソルトの私物であり、この時のために借りたもの。 今ソルトは、ユイランの部屋に誰も近付かないよう見張ってくれている。 (緑色……だからソルトだ!) リオンは光の色を確認してから無線機をONのボタンに切り替えた。 「どうしたの?」 無線機の奥は静かで、相手の息遣いだけが聞こえる。 『……リオン、もっと早く出ろよ。結構呼び出してたんだからな』 「ごめん、無線機の光って小さいし、わかりにくくて」 ソルトは声を潜めているようだった。 まるで何かから身を隠しているような――。 リオンもそんな彼につられ、声のトーンを落とした。 「……ソルト? 何かあったの?」 あくまでも落ち着いて話す彼女に対し、ソルトは少し早口でこたえた。 『いや、ユーフェンがさ……。……って、とりあえずユイラン連れて戻って来い! そろそろ限界だぞ』 「わ、わかった」 リオンが言い終わるか否かという瞬間、すぐに切れてしまった無線機。 ソルトはよほど急いでいるのだろう。 だとしたらすぐに戻った方がいい。
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