第14章

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「戻るのか?」 先程の無線機の声を聞いていたのか、ずっと黙りこくっていたユイランは口を開けた。 まだ火薬遊びは終わらない。 楽しさはこれからでもある。 彼女は残念そうに肩を落とし、こくりと頷いた。 「そうか」 リオンの動作を合図に、彼は立ち上がると体についた土や草を払った。 「早くしろよ」 「あ、はい……」 リオンはすっきりしないままでいた。 せめてもう少しここに居ることができたなら、彼を少しでも知ることができたのかと。 (前進、したって思ってもいいのかな) 誰にでも心を閉ざしてしまっているユイラン。 それは過去が原因か、それとも現在か。 二人は来た道を引き返す。 とは言っても道という道ではない。 城まで戻ることができれば、その後はちょっとしたサバイバル、樹木の枝道だ。 (暗くて見えにくいけど、何とか帰れそう) 樹木の幹に足をかけ、太い枝を選んで掴む。 そこにまた足をかけ、ユイランの部屋を目指す。 未だ続いている火薬遊びの光が、明るく足元を照らしてくれた。 足元だけではない、それは鞄も――。 (……え、鞄?) リオンは進める足を止めた。 それに気付いたユイランも足を止める。 「何やってんだ」 早くしろ、と言いたげな声だ。 彼女は光る鞄の中に手を突っ込んだ。 「無線機が……」 チカチカと取るのを促す光。 その色は……青。 ユーフェンからだ。 『青は絶対に取るな』 ソルトの念押しが、頭の中でリフレインする。 取ってはいけない。 けれどずっと光り続ける無線機を、無視することに躊躇いを感じる。 ユーフェンはソルトに用があって連絡を入れているのだ。 (でも取るなって言われているし……) 無線機を握る手が鞄の中へ戻ろうとしたが、それは中に入ることはなく、ユイランの手中へ。
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