第14章

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「何するの!?」 止めるのも虚しく、それは行われた。 ONのボタンをユイランの手によって――。 リオンは息を飲んだ。 必死に木から落ちないよう集中する。 ユイランは冷めた瞳で手中にある無線機を見ると、そのスピーカーを彼女へと向ける。 相手の声がよく聞こえるようにという配慮だろう。 無線機の奥は砂嵐のようにノイズが鳴っており、ユーフェンの声が途切れながら聞こえてきた。 『ソル……どこ、い……の?』 (あ! ソルトどこにいるの、かな?) 最初は聞くことを躊躇していた彼女であったが、いつの間にか無線機に耳を傾けていた。 声を出すまいと、手を口に当てながら。 『早くし……と、研究……っ。ノア……ちが……っ!』 (え、何……?) じんわりと額に汗が滲む。 一部分の単語しか聞こえない、わからない。 (また研究室?) ユーフェンを取り巻く研究室の存在。 先程のユーフェンの言葉は、それについて何か言っていた。 (『ノア』って何? 研究室の中にそれがあるの?) 訳がわからず混乱する。 だが、無線機の奥の空気は徐々に変わる。 『ソル、ト……?』 やはりノイズが邪魔をする。 ユーフェンの声をきちんと聞き取らせてはくれない。 しかし次の彼の言葉は鋭いものだった。 『君は誰……?』 「……!」 心臓を握り絞められたかのようだった。 相手にも聞こえてしまうのではないかという程に、高まる鼓動。 (どうしよう、どうしよう……っ) ――プツン。 「……え?」 途端に消えるノイズ音。 恐る恐るリオンは顔を上げると、無線機をイジるユイランの姿。 どうやらONからOFFに切り替えたらしい。
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