第14章

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「ほら」 彼から差し出された無線機を受け取るも、どこか思いつめた様子で、リオンはそれを鞄へ入れる。 その手は震えて危なっかしい。 「あいつから何も聞かされてねぇんだな」 リオンは手を止めた。 ユーフェンとは仲は良いが、それは上辺のことだ。 (私、ユーフェンのこと知らない……) 知っているのは上辺だけ。 好きになったのは、ユーフェンの仮面。 「そんなこと……」 ない、とは到底言い切れなかった。 ユイランとの会話から聞かされた、ユーフェンの裏の顔。 『俺はあいつに全てを奪われた』 『俺にとってあいつは悪魔だ』 今まで彼女が思っていたユーフェンと、大きくかけ離れたものであったから。 ユーフェンを信じられないわけではない。 心情を察してか、ユイランはフン、と鼻で笑うと、彼女にあるものを差し出した。 「これやるよ」 「……何?」 小首を傾げ、あるものを受け取る。 手の平にコロン、と転がったのは、銀色をした小さいもの、『R』という文字が入っている鍵だった。 「この鍵は……?」 「研究室の鍵だ。俺の部屋に落ちてた」 「ユイランの部屋に?」 (何で鍵が……) その鍵をころころと手中で転がす。 「それを使って、あの部屋に行ってみればいい。あいつが何を必死で隠しているかわかるさ」 研究室のことになると熱くなるユーフェン。 何よりも、誰よりも一番に研究室のことを考えている。 「でも……」 何があるのか知りたいが、ユーフェンにとっては知られたくないことだ。 「別に、抵抗があるなら無理して行かなくていい。鍵をソルトに返しとけ」 全てはリオンの選択。 それが吉と出るか、凶と出るかだ。
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