第14章

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体内が異常な程にザワザワと震える。 「苦、し……っ」 「もうちょっと頑張れ! 今医師を呼んでやるから!」 リオンはソルトが鞄の中から無線機を取り出すのを見届けた。その最中、ふと頭に浮かんだのはユーフェンの顔。 「……リオン?」 彼女は意識を手放してしまった。 リオンは夢を見ていた。 ペンキのようにベトリとした赤い渦が、彼女の体にまとわりつく。 どんなに必死にもがいても、払おうとしても、その行動を嘲笑うかのように体を覆っていく。 ヌルヌルとした液体が、遂に彼女を埋め尽した。 『……リオン』 聞き慣れた、声。 埋もれた自分を呼ぶ、声。 (……だれ……?) 僅かに瞳を開けてみる。 やはり、赤い渦しかない。 気のせいかと、また目を閉じた。 『……リオン!』 今度ははっきりと聞こえた声。 もう一度目を開けてみると、眩しい光が放たれた。 体を取り巻く渦は消えている。 (ユーフェン?) 光の先に見えた、人の姿。 繊細で綺麗な金の髪が、柔らかく揺れている。 彼女は必死に走った。 手をこれでもか、という程に伸ばして。 不思議と、体の異常は癒されていくようだった。 呼吸も正常になっていく。 (ユーフェン!) ようやく、掴んだ。 ユーフェンの服を。 「リオン!」 額に冷たいタオルを感じ、はっと目を開けた。 彼女は自室のベッドに寝かされていた。 ふと人の気配に気付きそちらを見ると、赤く目を腫らしたユーフェンがそこに居た。 リオンはしっかりと彼の服を握っている。 あの夢の人物は、やはりユーフェンだった。 「リオン……!」 リオンは腕を力強く引っ張られ、すっぽりとユーフェンの腕の中へ。 華奢だと思っていた彼の体は意外にも堅く、男の人であった。 驚きのあまりに目をパチパチさせるリオンは両手の居場所に困り、不自然に宙に浮かせた状態だ。
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