第14章

11/11
前へ
/40ページ
次へ
「リオン。今回のことで君は隠の気を受けやすくなってる。ユイランの付き人は辞めた方がいい」 「……え?」 (ユイランの付き人を、辞める!?) 折角ユイランと、少し近付けたのに。 これからもっと、わかっていけそうな気もしていたのに。 「そんな……、嫌だよ!」 「君は運が良かったんだ。隠の気を受けて気を失っただけで済んだんだから」 静かに口を開くユーフェンの手が、今度はリオンの髪を優しく撫でた。 そして彼女の額を自分の胸に当てる。 「僕はもう、失いたくないんだよ」 落ち着いた声。 けれど、どこか気持ちを押し殺したような声だった。 彼が何を心配しているのかわかる。 ユイランに近付けたくないのもわかる。 だが彼女にも譲れないものがあった。 何があっても、途中で投げ出さないということ。 リオンはゆっくりと額を彼から離し、見上げた。 お互いの瞳に、お互いの姿が映る。 「ユーフェン、私ならもう大丈夫だから。私、ユイランの付き人したいの」 「リオン……」 意思の強い瞳。 何があっても曲がらない信念。 (やっぱりダメか) ユーフェンは力なく溜め息を吐いた。 「……わかった。でもユイランに近付くのは一日一時間だけ。それ以上はダメだからね?」 「うー、うん……」 やはり納得いかないような顔付きのリオンの心情を察してか、彼は今度は少し乱暴に頭を撫でた。 「これは僕も譲れないよ。君が取り返しのつかない犠牲になったら嫌だからね」 リオンは仕方ない、と頷いて見せたが、同時に、彼の表情にも気になることがあった。 自分を見ているはずのユーフェンが、何か違うものを見ているような――そんな気がした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加