第12章

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「誰が出たくないって?」 まるで、ずっとここに居たかのように堂々と立っている。 彼女の心を見透かしてしまいそうなソルトの強い瞳。 「『誰か』と出かけたいのか?」 「あ……、いや……」 唐突なソルトの出現と、あまりにも的を射ている彼の発言に、リオンはたじろぎ巧く言葉が出てこない。 何か言い訳をしなければと思うほど、焦ってしまう。 「別に私は……」 宙を泳ぐ視線。 そんな様子に呆れたようにソルトは長い溜め息を吐いた。 「水くせぇな。話すだけでも話してみろよ」 「う……」 観念したリオンは彼に連れられ、自分の部屋に向かった。 リオンの部屋はユイランの部屋の隣なので、そう距離があるわけでもなく。 「……で? 何でまたユイランと」 部屋に着いた途端の第一声を、椅子に腰掛けるなり言葉を発した。 リオンはカップに甘めの紅茶をいれると、それを洒落た器にのせ、ソルトに差し出す。 カップに指をかけると、紅茶を一口、ソルトはゴクリと音をたてて飲みこんだ。 リオンはカップに手を添えるも飲もうとはせず、ずっと感じていた疑問を投げかけた。 「あの、……ソルト何で知ってるの? 私、名前出してないのに……」 ユイランの部屋から出てきたとき、ソルトは扉の前に佇んでいた。 彼女の行動心理を読んでいるかのように。 「あぁ、それは……」 溜めるようにもう一度紅茶を口に含む。 カチャ、とカップを器にのせた。 「リルがさ、俺んとこ来たんだ」 「リルさんが?」 「早い話、お前の脳内はリルにもバレてるんだよ」 なるほど、納得。 リオンは一口、紅茶を飲んだ。 (リルさん、心配してくれてるんだな) ユーフェンもリルも、そしてソルトも。 (感謝しなくちゃ) 彼女は顔を上げると、座ったまま頭を下げた。
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