第15章

2/12
前へ
/40ページ
次へ
ユイランの部屋に入ることが許されるのは、一日約一時間。 そう決められたリオンは、あの日以来手際が良くなった。 原則として毎日毎食はユイランの部屋に運ぶことになっている。 少食気味なユイランに食べるよう説得するのも、仕事の一つだ。 毎日の掃除と、ユイランの言いつけを聞いていれば、すぐに時間は過ぎていく。 (もっとしっかり部屋の掃除してあげたいんだけどなぁ……) 右手に箒、左手に塵取りといった掃除スタイルで、ユイランの部屋から出てくるリオン。 この日ももう一時間を過ぎてしまった。 隠の気が受けやすくなっていると言われていたが、あの時から身体の異常は見られない。 (ユーフェン、大袈裟なんだから) 城内にある掃除用具室に、箒と塵取りを直す。 綺麗にされているとは言っても、やはりここだけは少し埃っぽい。 リオンは手で口と鼻を押さえながら、小窓を開けた。 その瞬間にフワリと埃が宙を舞う。 「ふぅ……」 小窓のサンに手をかけて、彼女は一息ついた。 今日は雲一つない快晴で、涼風が吹いている。 髪を掻きあげ外を眺めると、見慣れた二人の後ろ姿が城門を出て行った。 「ユーフェンと、リルさん……?」 散歩だろうか、と考えたが、そのような雰囲気ではない。 二人の間で何か会話をしているようには見えなかった。 リオンは小窓を閉め用具室を出ると、アテもなく廊下を歩き回る。 (ソルト、どこにいるんだろう……) 何故か、彼にはわかっている気がした。 ユーフェンの付き人だから。 いつも自分を助けてくれるから。 理由は様々なのだが。 普段滅多に城を出ないユーフェンが、リルと一緒に外出をした。 気になった彼女はソルトを捜すが、どこにもいない。 ライトにソルトの部屋を教えてもらったが、そこにもいなかった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加