第15章

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(ソルトもいない……。皆どこ行っちゃったんだろう) 居るのは自分とユイラン、ライト。 使用人もいつもと変わりなく働いている。 (すぐ帰ってくるかな) とりあえず自分の部屋に向かう彼女であったが、何かを思いついたように顔を上げて足を止めた。 その表情はどこかご満悦だ。 「そうだ! この機会を逃しちゃダメだよね」 リオンは来た道を急ぎ足で戻る。 ユーフェンが居ない今、できることがある。 ユイランの部屋に入るのは一日一時間。 けれどユーフェンが居なければ、少々それを越えても咎める人はいない。 (今の内に掃除しちゃうもん) 掃除用具室から今度は叩きと雑巾を取り出し、勢いの余り乱暴に扉を閉めた。 その音で使用人達の注目を浴びることになったが、リオンは気にも止めずユイランの部屋へ走っていった。 「ユイラン、入るよー?」 走って来たため、部屋に着く頃にはすっかり息が上がってしまった。 肩を上下に揺らすが、やはりその顔は嬉しそうである。 「……また来たのかよ」 ユイランは溜め息混じりに彼女を見る。 リオンは雑巾を窓のサンに置くと叩きを持ち直し、椅子を台にして、高いところの埃落としを始めた。 「ユイラン、ちょっと埃が舞うけど我慢してね」 言いながらもパタパタと叩きをかける。 鼻歌まで口ずさみ始めたリオンに、ユイランは呆然とした。 「どういう心境の変化だよ。ここ最近はあんまり掃除なんかしなかったくせに」 リオンは手を止め、叩きを持っていない方の人差し指をピンと立てた。 「だからだよ! 今日はユーフェンもリルさんも居ないから」 「ユーフェンが居ない……?」 手を顎に持っていき考え込むユイラン。 時折外の様子も伺っている。
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