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翌朝、一〇時。
天気はやや曇り空、太陽が雲の奥に隠れてしまっている。
風の音も煩く、ザワザワと騒いでいるようだ。
それは、誰かの心のようにも思えた。
「今日、天気あんまり良くないね。ユーフェン達、帰り大丈夫かな」
「……」
いつものように、ユイランの付き人の仕事をこなしていく。
今日はゴミ出しの日で、部屋のゴミの回収に来た。
――とは言うものの、彼の部屋からはあまり出ないのだが。
「雨、降らないといいんだけどなぁ」
「……」
「ユイラン?」
いつも以上に、初めの頃のように無口で、眉間に皺を寄せているユイランは、今日はまだ一言も口を訊いてはいなかった。
(昨日の時のままだ)
「体の調子悪いの?」
心配になった彼女は声をかけた。
「別に」
やはり素っ気ない。
だが彼の言う通り、体に異常はないようだ。
(どうしちゃったんだろ……)
ゴミを回収し、部屋を出て行こうとした時、城の外で、数人の声が聞こえた。
それは驚いたような嬉しそうな、感嘆めいた声。
もうユーフェン達が帰って来たのかと思ったが、まだ昼前だ。
彼女はあまり気にも止めず、ユイランの部屋を出ていった。
(……来やがったか)
窓の外を眺めるユイランの眉の皺は、また一層深まるのだった。
少量のゴミを持ち、リオンは焼却室へ向かう。
城から少し離れた中庭にポツンとある部屋が、焼却室だ。
彼女は渡り廊下を歩きながらそちらを見ると、煙突から煙がたっていた。
(皆ゴミ出すの早いな……)
そう思い焼却室の扉に手を掛けたときだった。
「おや、可愛い姫君だね」
振り向いて見ると、満面の笑みを浮かべた男が立っていた。
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