第15章

6/12
前へ
/40ページ
次へ
翌朝、一〇時。 天気はやや曇り空、太陽が雲の奥に隠れてしまっている。 風の音も煩く、ザワザワと騒いでいるようだ。 それは、誰かの心のようにも思えた。 「今日、天気あんまり良くないね。ユーフェン達、帰り大丈夫かな」 「……」 いつものように、ユイランの付き人の仕事をこなしていく。 今日はゴミ出しの日で、部屋のゴミの回収に来た。 ――とは言うものの、彼の部屋からはあまり出ないのだが。 「雨、降らないといいんだけどなぁ」 「……」 「ユイラン?」 いつも以上に、初めの頃のように無口で、眉間に皺を寄せているユイランは、今日はまだ一言も口を訊いてはいなかった。 (昨日の時のままだ) 「体の調子悪いの?」 心配になった彼女は声をかけた。 「別に」 やはり素っ気ない。 だが彼の言う通り、体に異常はないようだ。 (どうしちゃったんだろ……) ゴミを回収し、部屋を出て行こうとした時、城の外で、数人の声が聞こえた。 それは驚いたような嬉しそうな、感嘆めいた声。 もうユーフェン達が帰って来たのかと思ったが、まだ昼前だ。 彼女はあまり気にも止めず、ユイランの部屋を出ていった。 (……来やがったか) 窓の外を眺めるユイランの眉の皺は、また一層深まるのだった。 少量のゴミを持ち、リオンは焼却室へ向かう。 城から少し離れた中庭にポツンとある部屋が、焼却室だ。 彼女は渡り廊下を歩きながらそちらを見ると、煙突から煙がたっていた。 (皆ゴミ出すの早いな……) そう思い焼却室の扉に手を掛けたときだった。 「おや、可愛い姫君だね」 振り向いて見ると、満面の笑みを浮かべた男が立っていた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加