第12章

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「ソルト、手伝って下さい」 皆が心配してくれて、力も借してくれて。 だとしたら、自分は人のために何ができるか。 ユイランが外に出たくないはずはない。 何か理由をつけているだけなのだ。 「私、少しでもいいからユイランを外に出してあげたいの」 ソルトは彼女の話をじっと聞いていたが、静かに口を開けた。 先程とは違う、落ち着いた真剣な表情で。 「ユイランは何て言ってた?」 未だ残る問題。 いくらこちらの準備ができたとしても、本人が来なければ何の意味もなさない。 『外に出たくないの!?』 『別に』 まるで興味がないような言い方だった。 しかし、リオンは気付いていた。 いつもユイランは窓際に座っていたことを。 窓の外を見ていたことを。 「ユイランは『行かない』って言わなかったか?」 ソルトの言葉に、彼女はばっと顔を上げる。 「うん、言った……!」 ちゃんとした言葉ではなかったけれど、まるで興味がないかのように。 「でも、でもそんなはずないよ……。出たくないわけ、ないよね?」 ソルトは空になったカップを握り、身動き一つしない。 「あぁ、そうだな。でも、あいつは出ないって言い張ると思うぜ」 「どうして!?」 リオンは思わず立ち上がり声を荒らげた。 ガタン、と椅子が後ろにひっくり返る。 ソルトは目を見開き、「落ち着けよ」と彼女をなだめた。 「ソルトは知ってるの? ユイランが外に出ないって言い張る理由」 机に両手をつき、あくまでもゆっくり問うリオン。 彼の視線を捉えて離さない。 「知ってるさ」 リオンの強い視線に、負けじとソルトも見つめ返す。 しかし彼に笑みはなく、冷たい汗が彼女の背中を伝った。
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