第12章

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ソルトは呆れたような、困ったような表情をすると、ふっと笑みを溢した。 「……そっか。それなら俺も協力してやるよ」 その言葉に、リオンは手を叩いて嬉しそうに笑った。 「ほんとに!? ありがとう、ソルト!」 残る問題はあと一つ。 ユイランの本心を聞き出すこと。 (以前のことで、きっとユイランは責任を感じてるんだ……) 自分のせいで、犠牲者が出たこと。 彼女はふと、先程のソルトの言葉を思い返した。 (そういえば、犠牲者って一体何が起こったんだろう) 今も生きているのか死んでいるのかさえも言わなかった。 ただ大雑把に犠牲者と。 (聞いてもいいのかな……) 穏やかになったソルトの瞳をじっと見つめると、彼は閃いたように「あっ」と声を洩らした。 「じゃあ、これお前に貸してやるよ。外出て行くんだったら少しは役立つだろ」 そう言って手渡されたのは、ユーフェンやライトも持っている無線機だった。 ソルトはリオンの方に身を乗り出すと、無線機を指差した。 「ここの緑のランプが光ったら俺な。ここが光ったら絶対取れよ」 リオンは頷いて、隣のランプを指差した。 「この青のランプが光ったら?」 彼は一瞬身を固め、息を殺して声を発する。 「……青はユーフェンだ。光っても絶対出るな」 リオンはぎゅっと無線機を握ると、再び頷いた。 誰にも、明日の計画に気付かれてはいけない。 勿論、ユーフェンやライトにも。 (ユーフェンに隠し事……嫌だけど) だが、もう決めたこと。 「ランプが光った後にこのボタンを押したら連絡を取り次げる。……いいか?絶対青のランプは取るなよ」 彼は彼女に念を押す。 彼女はそれに、また黙って頷いた。 決行は、明日の夜。 明日の夜までにユイランの本当の心理を聞き、準備をしなければならない。 「じゃ、俺行くよ。今日はしっかり眠りな」 「うん、ありがとう」 この時、リオンは予想だにしなかった。 明日の夜に知る、衝撃的な事実を――。
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