0人が本棚に入れています
本棚に追加
(私がユイランを救うんだから……)
草木も眠る丑三つ時、リオンは時を刻む時計の音を聞きながら、眠りに落ちていった。
ユイランのことだけを考えながら――。
眩しい太陽の光が、カーテンの隙間から差し込んでくる。
今日は良い天気だ。
火薬遊びをする日にとてもふさわしい。
「……今、何時……?」
重い瞼を擦りながらリオンは時計に目をやると、針はもう一〇時を指していた。
いつもの三時間、寝坊してしまったということになる。
「しまった、寝坊! 朝食……っ」
リオンは一気に眠気が覚め、いつもの服に着替えると、ろくに髪もとかさず食堂へと向かった。
自分の仕事はユイランの付き人。
彼の身の周りの世話が第一の仕事であるのに、自分は一体何をしているのか。
「ユイラン、ごめん!」
食堂へ行って朝食を受け取り、ユイランの部屋へと向かったリオンが慌ただしく扉を開けると、そこにはいつものように窓の外を眺めるユイランの姿があった。
今日はいつにも増して、そんな彼の姿が幻想的に見える。
木々の合間をぬって入り込んできた唯一の光が、まるでスポットライトのように彼を照らした。
黒の髪が反射して、涼しげに風になびく。
ユイランは相変わらずこちらを見ようとはしない。
「朝っぱらからうるせぇ」
「ご、ごめん……」
リオンは部屋の中へ入ると机に朝食を置き、グラスに水を注いだ。
「朝食遅くなってごめんなさい」
その言葉にユイランは視線だけ彼女の方へ移す。
だが何も語ることはせず、朝食にも手をつけようとはしない。
「ねぇ、ユイラン。今日の夜だけでいいから、私を信用してくれないかな」
涼しい、穏やかな風が窓から入ってきた。
黒の髪が揺れ、ユイランは目を伏せた。
頬に、長い睫毛の影が落ちる。
最初のコメントを投稿しよう!