第13章

3/11
前へ
/40ページ
次へ
(私がユイランを救うんだから……) 草木も眠る丑三つ時、リオンは時を刻む時計の音を聞きながら、眠りに落ちていった。 ユイランのことだけを考えながら――。 眩しい太陽の光が、カーテンの隙間から差し込んでくる。 今日は良い天気だ。 火薬遊びをする日にとてもふさわしい。 「……今、何時……?」 重い瞼を擦りながらリオンは時計に目をやると、針はもう一〇時を指していた。 いつもの三時間、寝坊してしまったということになる。 「しまった、寝坊! 朝食……っ」 リオンは一気に眠気が覚め、いつもの服に着替えると、ろくに髪もとかさず食堂へと向かった。 自分の仕事はユイランの付き人。 彼の身の周りの世話が第一の仕事であるのに、自分は一体何をしているのか。 「ユイラン、ごめん!」 食堂へ行って朝食を受け取り、ユイランの部屋へと向かったリオンが慌ただしく扉を開けると、そこにはいつものように窓の外を眺めるユイランの姿があった。 今日はいつにも増して、そんな彼の姿が幻想的に見える。 木々の合間をぬって入り込んできた唯一の光が、まるでスポットライトのように彼を照らした。 黒の髪が反射して、涼しげに風になびく。 ユイランは相変わらずこちらを見ようとはしない。 「朝っぱらからうるせぇ」 「ご、ごめん……」 リオンは部屋の中へ入ると机に朝食を置き、グラスに水を注いだ。 「朝食遅くなってごめんなさい」 その言葉にユイランは視線だけ彼女の方へ移す。 だが何も語ることはせず、朝食にも手をつけようとはしない。 「ねぇ、ユイラン。今日の夜だけでいいから、私を信用してくれないかな」 涼しい、穏やかな風が窓から入ってきた。 黒の髪が揺れ、ユイランは目を伏せた。 頬に、長い睫毛の影が落ちる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加