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向こう側のホームに停まっていた電車が、また次の駅を目指して動き出した。
いい加減涙も止まったというのに、彼女はまだ俺にくっついたままだ。こちらとしては全く問題ない、というかむしろありがとうございますという感じなのだが、そろそろ電車が来てしまう。
「あの、そろそろ…」
「待ってるから」
俺よりほんの少し背が低い彼女が、俺の鎖骨あたりに顔をうずめたまま言葉を遮る。何と返せばいいのか迷って、結局「うん」とだけ答える。
「帰って来てね」
「うん」
「絶対だよ」
「うん、絶対」
「忘れたら、まじで針千本飲ますからね」
「うん…待ってそれは怖い」
あながち冗談でもなさそうで本当に怖い。
「帰ってくるよ、絶対」
「…じゃあ、その時は絶対連絡してよね」
「もちろん。あー、でもサプライズでいきなり行くのも良「それはだめです」はいごめんなさい」
こちらを見上げた彼女がくすくすと笑う。つられて俺も笑った。
ホームに、電車が来ることを知らせるベルが鳴り響く。
もう時間がない。
「あのさ」
「何?」
「俺、ずっと君が好きだった。今も好き」
「…実は知ってた」
「まじで?」
「まじ。でも確信はなかったから、嬉しい」
「そっか、良かった」
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