ホーム

2/5
前へ
/5ページ
次へ
向こう側のホームに停まっていた電車が、また次の駅を目指して動き出した。 いい加減涙も止まったというのに、彼女はまだ俺にくっついたままだ。こちらとしては全く問題ない、というかむしろありがとうございますという感じなのだが、そろそろ電車が来てしまう。 「あの、そろそろ…」 「待ってるから」 俺よりほんの少し背が低い彼女が、俺の鎖骨あたりに顔をうずめたまま言葉を遮る。何と返せばいいのか迷って、結局「うん」とだけ答える。 「帰って来てね」 「うん」 「絶対だよ」 「うん、絶対」 「忘れたら、まじで針千本飲ますからね」 「うん…待ってそれは怖い」 あながち冗談でもなさそうで本当に怖い。 「帰ってくるよ、絶対」 「…じゃあ、その時は絶対連絡してよね」 「もちろん。あー、でもサプライズでいきなり行くのも良「それはだめです」はいごめんなさい」 こちらを見上げた彼女がくすくすと笑う。つられて俺も笑った。 ホームに、電車が来ることを知らせるベルが鳴り響く。 もう時間がない。 「あのさ」 「何?」 「俺、ずっと君が好きだった。今も好き」 「…実は知ってた」 「まじで?」 「まじ。でも確信はなかったから、嬉しい」 「そっか、良かった」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加