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「は、はあ?ちょっと、殺すってなんだよ…?」
そいつは何も答えなかった。
「魚とか牛とか豚とか?」
そう聞くと
『いや、違う』
「…じゃあ、害虫駆除的な?」
『いいや』
俺はまさかとは思い、冗談交じりに聞いてみた。
「え?もしかしてだけどさ、いやもしかしてなんだけどさ……人だったりして?」
『……うん。』
「じゃあな。」
電話を切ろうとすると、そいつがまた『待ってくれ!悪かった!話す!ちゃんと話すから聞いてくれ!』と叫んだ。
そいつの鬼気迫る声に、俺は知ってはいけないことを知ってしまったような気がした。そして、このまま電話を切ったら自分の身も危ない気もした。
なので、ゆっくりと断ることにした。
「いや…悪いんだけど、俺逮捕されたく無いからさ。あと絶対このことは誰にも言わないから。」
すると、そいつからは返ってきた言葉は意外なものだった。
『絶対に逮捕されないから大丈夫。それだけは大丈夫。……だって合法だから。』
「え、ええ?」
下手に話を聞いてしまったばかりに、心に余計な好奇心のようなモヤモヤが生まれてしまった。
俺は追求した。
「これで何も言わなかったら切るからな。」
するとそいつは、覚悟を決めたように深呼吸すると静かに言った。
『俺さ……今、刑務官なんだ。』
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