短時間 高収入

9/10
前へ
/10ページ
次へ
そこは、真っ白な広い部屋だった。 壁も床も白く、自分達が入って来た扉の、反対側にも扉があった。 その隣には、大きなテレビが置いてあるだけで、死刑囚も、首をくくる縄も、死刑執行のボタンを押す装置も見当たらない。 辺りを見回していると、職員が 「あーダメダメ。 そこ、危ないから壁にくっついてて。」 と、言って手で仰いだ。 俺は、これから起こることの緊張に加えて、想像していた状況の違いに、つい職員のおじさんに聞いてみた。 「あの…仕事って、死刑執行のボタンを押すんじゃないんですか?」 職員のおじさんは目を丸くした。そして、ため息をつくと無言でテレビをつけた。 そこには刑務官が5人整列して並んでいて、1人1人がカメラ目線になるように映っていた。 そしてなんと、その刑務官の中に、電話をかけて来た、あの知り合いがいた。 画面の右上に『ボタン室』と書いてある。 「ボタンは彼等しか押せないよ。」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加