フォトジェニック・ラブ

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 可愛いことを言う歳下の恋人を思いっきり甘やかすように、そして甘やかされるように抱きしめ合った。長い抱擁のあと、ポケットに忍ばせていたものを、奏に握らせる。 「こんな部屋で良かったらいつでも遊びに来て」  奏に握らせたのはこの部屋のスペアキーだ。奏は顔を上げると、潤んだ瞳を私に向けた。 「こんなことされたら、私しょっちゅう来ますよ」 「いつでもおいで」  そう言って私は奏の頭をくしゃりと撫でた。そうすると奏は顔を上げず、玄関のドアを思いきり開けて部屋から出ていった。きっといま奏は嬉しくて泣いている、ということが偉そうにも私にはわかった。うぬぼれなんかじゃない。奏は大きな感情に揺さぶられ、涙が流れてしまうときに、私から離れようとする。初めて告白されたときも、きっとそうだ。奏は私の前では決して泣かないだろう。それが彼女のプライドであり、私への愛の示しかただと思うと胸が締め付けられた。奏に会うたびに愛おしいという気持ちばかりが募る。困ったな、こんなにも好きになってしまうなんて。  そんな奏と私のあいだに距離を感じたのは、彼女の通う高校に行ったときだった。     
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