オロカモノ。

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「毎回いい仕事してくれるよ、“村長さん”は。確かに、噂に釣られて宵口村にやってくるアホどもな耐えないようだがね」  熊男はそう言って大鎌を壁に立て掛けながら問う。 「一体どんな手品を使ってんだい?エサが、のこのこ俺らの罠にかかるように誘導するだなんてよ」 「なんだい、そんなことが気になるのか。簡単なことさ」  男の杯に焼酎を注ぎながら、今宵はにやりと答えた。 「ああいう奴等には。“やるな”“するな”は“やれ”って言ってるのと同じことなんだよ。ちょいと考えれば分かることだろうにね。なーんでわざわざ私が、少し念入りに探さないとわからないような“絶対に入ってはいけない洞窟”の場所を教えるのかってことにさ」  宵中村。その閉ざされた村は、昔から密かに行い続けてきた風習がある。  それは――迷いこんだよそ者を村中に張り巡らせた罠にかけて、生きたままその肉を食らうというものだ。  人間の肉ほど旨いものはなく、不老長寿の妙薬になるものはないと彼らは信じている。そして、法の網をくぐり抜け、ひたすら獲物を少量ずつでも狩る方法がなんなのかを、よく理解しているのだ。  宵口村に住み着き、雇われた今宵達はただただ何も知らぬ地元民を演じればいいのである。恐ろしい噂話が広まれば広まるほど、馬鹿な者達は次から次へと誘い出されて、自分達の報酬をがっぽりと増やしてくれるのだから。 「ま、また町に降りて適当に噂を流してくるさ。どのみち、オカルト番組のスタッフが行方不明になったなんてすぐに知れて、いい感じにバカどもの興味を引いてくれそうだしねぇ」  飲み交わす酒に、血の臭いが混じろうとも気にしない。  神をも恐れぬ愚か者など、むしろ綺麗に掃除された方がいいに決まっているのだから。
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