オロカモノ。

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 つまり、大半の若者がテレビを見るとしたら、録画かネット配信か深夜放送か、というのがこのご時世なのだ。深夜放送は意外と見てもらえるとはいえ、当然逆に家族連れや高齢者の支持を得られるものではなし。そんな状況で、やれ視聴率が何パーセントだのどうの、と言われたところで実際の評価とさほど繋がらないことに何故気付かないのか。 ――まあ、んなこと言ってもしょうがねぇよな。オッサンの俺のさらに上行くジジイどもだし。  色々不満はあるが、仕事は仕事である。成果を出せば認められるならやるしかない。幽霊か、それ相応のヤバイものが出てきてくれれば万々歳。なんならアレな儀式の資料とかでもいいし、取材中に死体でも見つければ大スクープだ。そういう意味では、今回のこの取材には少しだけ期待している竹田だった。  栃木県●●市、宵口村。  この村の近辺では、行方不明者が不自然に多発しているのである。何度か警察も捜査に乗り出したが全て頓挫しているそうな。――わかったことといえば、少なくとも村の住人が殺人を犯しているわけではなさそうだ、というくらいである。  同時に、村の周辺には奇妙な大男の姿が目撃されたこともあるのだとか。血のついた大鎌をもっていたことから、あれがきっとカマイタチに違いない――なんてことを言う者もいる始末である。実際、宵口村にはカマイタチに関する伝承もあるのだとかで、これは取材するしかないと自分達が繰り出してきたわけだ。 ――幽霊が映らなくても、行方不明者の骨が見つかるとか……とにかくヤバそうな雰囲気だけでも伝わればいいさ。俺らの番組見てる若造どもは、そういうのを期待してるんだからよ。 「遅くなってすみませんね、テレビのみなさん」  ボロ畳の和室で待たされること二十分ほど。部屋に入ってきたのは、村長を名乗る老人だった。年は七十くらいだろうか。名を、今宵誠太郎というらしい。何でも、この村の村長は代々今宵家の男児が継ぐのが習わしなのだそうだ。  隣の、お茶を持ってきてくれたのは奥さんだろうか。少し腰の曲がった老婆はどこか暗い顔で、落ち着きなく村長と自分達を見比べている。否、顔色がよくないのは村長も同じか。下がっていてくれ、と彼女を部屋から追いやると、村長は疲れたようにテーブルの前に座った。
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