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「ありがとうございました、村長さん。スタッフ一同、肝に命じておきますね」
五木がお辞儀して、自分達スタッフもそれに倣う。わかってるな?と五木に目配せすれば、呆れたような笑みで返された。ディレクターの考えなんてわかっちゃってますから、とでも言いたげである。まあ、彼女が落ち目でこの仕事に流れてきたとはいえ、オカルトそのものには相当興味を持っていることも自分は知っているのだ。
――さて、村の奴等の目を盗んで動く準備をしねぇとなあ。
洞窟の奥の、扉の向こうの封じられた宵口村。一体どんなところなのだろう。
――なぁに、多少何かあっても問題ないさ。こちとら学生時代はアメフトやってたんだ、腕っぷしと体力には自信があるしな!
まあ、五十路も手前で最近はすっかり腹も出てきたけれど。竹田は太鼓腹をさすりながら、今夜のスケジュールを考えていた。――オカルト番組の、基本。どうせなら撮影は夜がいい。
――確かめてやるさ……田舎村の、古くさい言い伝えの真相って奴をな!
***
「はい、お疲れ様。ほれ、いつもの報酬な」
「いやいやどうも、ありがとうございます」
のしのしと部屋に上がってきた大男を招き入れ、報酬を受け取った宵口村村長――今宵誠太郎は微笑んだ。熊のような毛皮を纏っているが、客人はれっきとした人間である。日本人にしては少しばかり体躯が大きいが、それだけだ。なんでも、宵中村の者達はみんな、外の者達と比べて体が大きくて地からが強く、老人や女も非常に強靭なのだという。やはり特性の“薬”のおかげかね、と大男は今宵に向けて笑って見せた。
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