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4.静かな1日
窓の外では冷たい小雨が降っている
私は
暖房のきいた室内で
レモンの香り立つ紅茶を静かに飲む
私に与えられた限りある一日の
でも、平凡な一日が終わろうとしている
何もなかったことの幸せは
何もなかったことの寂しさに似ているけれど
こんな何の音もない日が
どれだけ贅沢かを噛みしめ
「明日」という日に
優しく口づけしよう
5.希望(のぞみ)
暗闇の道が続く中
街灯は弱々しく宙を照らすだけ
遥か先で明滅している
点のような希望を
ただただ信じて
ひたすらまっすぐに
進んできた
振り返ると
後ろには折り重なった小さな自分の
哀しい残骸しか見えないけれど
きっといつか
希望の中に自分が溶け込める
そんな気がする
6.さようなら
別れるために出会った人は
本当に大切な人だから
哀し過ぎて
「さようなら」
なんて言えない
だから
病床の母さんには
「ありがとう」
って言った
7.それでも生きる
いっぽんの線が
途中で切れたとしても
つなげればいい
つなぐための
鉛筆さえ持っていればいいだけのこと
何があっても
それでも生きるという
しぶとさだけが
ぼくの由一の長所だから
8.素直になれなかった恋
素直になれなくて喪った恋は
悲しい味がして
いつまでも心に残っている
古いアルバムの中で見つけてしまった
まだ終わりを知らぬ二人は
楽しそうに微笑んでいて
洗い流したはずの思い出が
鮮やかに色づき出す
巻き戻した時は
切なく、すぐに消えてしまったけれど
心の中を爽やかな風が吹き抜ける
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