その二

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悲しみの底 悲しみを じっと我慢していても 一粒零れ落ちた涙は 海へと続く川の水のように とめどなく流れ ほんの少し身体を軽くするが 頭の中は空っぽとなり もっと深い悲しみに襲われる でも、もう涙は出ない そこが、悲しみの底だ 緑の大地 陽春のさわやかな風を受け、旅に出よう 君の乗る列車は草原を走り抜け 神様の用意した 未来への入り口まで誘う どうでもいいことで思い煩うことは止め 苦しみや悲しみからも自由になろう 暗い闇を見つめていても 何も解決はしない 言葉を捨て つまらぬ分別も捨て 生まれたままの自分に戻ろう 緑深い大地が ありったけの愛情で包んでくれる 田園風景(旅立ち) 執拗な寒さをもたらしていた冬の隙間から 春がやわらかな顔を覗かしている 甘い匂いの春風がのどかに流れ 辺り一面に田園風景が広がる これまでもそうであったように これからも あなたを輝かすことができるのは あなた自身 夢と希望と愛情を味方につけ この田園風景のような、おだやかで 豊かで、大きな心を持って ゆっくりと歩いて行こう 正気と狂気の境 目をつむると 遠くの方で、海岸線に打ち寄せる波の砕ける音が聞こえる もう長い間、私は正気と狂気の境を行き来している のめり込んだ仕事の中で 悪意に満ちた言葉の渦に飲み込まれ ささくれ立った神経はいつも血で濡れていた 傷ついた正気から身を守ってくれるのは狂気でしかなく 私は、静かに、静かに狂っていった 海の見える丘の上で 廃船のようになった自分の心の中を覗く わずかに残った正気が 無表情に光っている
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