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私が見る世界は昔から2色だった。たったの。
………白と黒、ただ2色だけ。
でもこの2色にはルールがあった。いろんなテレビや会話を見て聞いてわかったこと。それは「下心を持っているもの」「嘘をついているもの」は黒くなり、それ以外は白いのだ。だから鏡の自分も真っ白。母さんも真っ白。私達を捨てて蒸発した父親は真っ黒だった。
……嘘ばっかり。テレビに映ってる超能力者とか、ぜーんぶ真っ黒。アイドルとかも黒い人いるし。
そういや…「事実を知って悲しくないの?」って私の視界の事、相談した友人に聞かれた事があった気がする。
しかし別段この視界に苦労しているわけではない。
むしろ嘘か誠か判断できるなら有り難いものではないか。
「母さん」
私は真っ黒な人が歌ってるテレビを切り、母に話しかけた。
「なぁに?どうしたの?」
と返ってきた。母さんとはあまり会話しなかったのだが、それでも優しい声で返事をしてくれた。
「ご飯の準備でしょ?手伝う。」
「ありがとうねぇ。助かるわぁ。」
私は少し上機嫌で母の元に手伝いに行った。母さんは振り向いて………こう言った。
「流石は私の娘ね」
……振り返ったその顔は、真っ黒で。
(……知りたく、なかったかも…)
でも…優しい声の母に…なんて…聞けばいいの…?
だから私も優しい声で返す。
「そう言ってくれて嬉しいよ、母さん。」
私も今…………
真っ黒だ。
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