伝書蝶

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伝書蝶

「伝書鳩って知ってる?」  「突然何よ?」  「昨日テレビでやってたの。手紙を首につけて鳩  の帰巣本能を利用して通信してたんだって。」  「ふーん…で?」  「…それだけ。」  「終わりかい!」  「話したかっただけ。」  「咲那ったらいつもそう!しょうがないなもう。」  「へへっ。」       家に帰って部屋のドアを開けて驚いた。蝶がいたのだ。赤がかった虹色で、金の鱗粉をまき散らして優雅に舞っていた。  「窓、閉まってるのに。」  捕まえようとしたが逃げられた。すると、机の上にとまった。  「え?」  そのとたん蝶は手紙へと姿を変えた。恐る恐る手にとって読んでみた。  『どこか知らぬ場所のあなたへ   私は雪佳といいます。とある山奥に療養にきて   います。寂しいので手紙を書きました。笑。   好きなものは歌を歌うこと。好きな食べ物は   りんご。   お返事ください。』  「お返事ください、ねぇ…だいたいどこから   きたのよこれ…」  そのときふと、友達との会話を思い出した。  「伝書鳩…?でも蝶だしな…うーん」  不可思議現象は信じないほうだった。だからほうっておこうとした。でも、妙にあの蝶の姿に惹かれたというか何というか、返事を書きたくなった。  『雪佳さんへ   お手紙ありがとう。私は須藤莉緒です。   私の好きなことはバスケをすることかな。   プロを目指してるの。好きな食べ物は、   いっぱいあるけど1番は梅干し!』  ここまで書いて、蝶のことを聞くか聞かないか悩んだ。  「とりあえずここまででいっか。   あとは、これをどうやって届けるかだよな…   …明日考えよ!」  その日不思議な夢を見た。青っぽい蝶が舞いながら星になる夢を。  朝起きたら手紙はなかった。  「つまりこれは送れたってこと?」    
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