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午後の休み時間、クラスの中でも割と情報通な子の何人かと、机を囲んでいた時のことだ。最近産休に入った先生についての話が終わり、次の話題を待つような軽い沈黙が生まれていた。私は自分の髪を少し触りながら『この学校に変わった子っているかな?手相占ってみたいんだけど』と小石を投げてみた。すると橘アンの噂がぽろっと出てきた。
「うーん、あの子は何て言ったらいいのかなー。動物で例えたらナマケモノ…みたいな感じ」
「ああ、確かに分かるけど、それ言い方ひどくない?」
「だってそうとしか言えないし」
「それって、顔がナマケモノに似てるってこと?」
「違う違う。橘さんは超美人だよ。雪女みたいな人。行動がナマケモノそっくりなの」
「授業中ずっと寝てたり、サボったりしてるとか?」
「いやそこは全然真面目らしいよ。私もあんまり見た事ないんだけど、何ていうか、動きがスローなんだよね」
「そうそう、螺旋階段の上からスカート掴んでゆっくり降りてくる感じ」
「分かる。そのイメージ一番近いかも。アン姫」
「プリンセス・アン」
私がいるA組とその子がいるN組は、校舎がまったく別になっていた。その為、顔を合わせる機会が無く、噂を耳にするまで私は橘アンの事をほとんど知らなかった。
さらに話を聞いてみると、アンは余命を宣告されるほどの重い病気にかかってたらしい事が分かった。一年の頃の出席日数はほぼゼロ。しかし最近、突然病状が回復し、学校に通えるようになったらしい。病後の為か体育などの授業は全て見学。
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