昼休みの私たち

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 私たちはお昼休みをできるだけ二人きりになれる場所で過ごす。だいたいは体育館の裏。でもたまに先客(せんきゃく)が居ることがあるので、そういう時は一番北にある校舎の裏へ移動する。どちらも居るだけで体に(こけ)が生えてしまいそうなジメッとした所だ。お世辞にも食欲が湧くような場所とは言えない。でも私たちにはそんな事は関係ない。お昼休みはお互いに仕入れた女の子たちの情報を交換し合う為の時間だからだ。  今日は先客は居なかった。私たちは体育館裏の冷んやりとしたコンクリートの上に並んでひざを抱えた。すぐ(そば)にある側溝(そっこう)(ふた)の上を、隊列からはぐれた蟻がくたびれた様子で右往左往していた。ユイがスカートのポケットから小さな手帳を取り出して読み上げた。 「二年C組、櫻井(さくらい)カナコ、バスケ部、足が速い。……以上」 「…え?ユイそれだけ?」 「うん…」 「ちょっと少なくない?それに運動系の部活に入ってる子は優先度低いじゃん」 「あっ…そうだった……こういうの苦手……」  実はユイも私と同じ日にこの学校に転校してきた。でもこの子は情報を仕入れる事に関しては少しばかり要領が悪い。まず第一にしゃべる声に覇気(はき)がない。そしてちょっと小柄な体型とおかっぱみたいな髪型のせいで、風邪をひいた日本人形みたいな印象になっている。その為か、友達を作る事に少し難儀(なんぎ)しているようだった。  私はユイに周りの子と仲良くなる為のレクチャーをすることにした。 「基本は三つだよ。笑顔、名前を呼ぶ、()める」 「うん…」 「で、できればボディタッチ」 「でも……触り返されたら…困る」     
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