昼休みの私たち

3/4
前へ
/29ページ
次へ
「それもあるけど。まあ滅多な事じゃバレないと思うし。まずは私を練習台にしてやってみて。ほら」 「うん…」  ユイは口の端だけを上げて笑った。そして私の太ももを見つめ、鰹節(かつおぶし)を削るみたいにそこを()で始めた。 「レナ…綺麗だね……」 「うーん、それだと、ただのセクハラおやじかな…。それに話す時は相手の目を見て喋った方がいいよ」 「難しい…」 「あと、褒める時は少し具体的に褒めるといいと思うよ。こんなふうに…」  私はユイの頭を優しく撫でながら言った。 「ユイはこけしみたいで可愛いね」 「あ、ありがと…」  ユイは抱えていた膝の間に顔をキュッとうずめた。 「いや、そこは『せめて日本人形みたいって言ってよ!』って突っ込む所なんだけどね」 「難しい…」 「こういうノリは確かに難しいかも。漫才とかトーク番組見て勉強するしかないね。お笑い好きな子結構多いから、話題を作る上でも役に立つと思うよ」 「うん…」  ユイは優しい子だと思った。まだ知り合って日が浅いけれど、いろんな女の子を見てきたから何となく分かる。相手の気持ちを考え過ぎて、自分の言葉が上手く出せない子。  昼休みが終わる五分前のチャイムが鳴った。渡り廊下を走っていく上履きの足音が聞こえる。     
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加