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「それもあるけど。まあ滅多な事じゃバレないと思うし。まずは私を練習台にしてやってみて。ほら」
「うん…」
ユイは口の端だけを上げて笑った。そして私の太ももを見つめ、鰹節を削るみたいにそこを撫で始めた。
「レナ…綺麗だね……」
「うーん、それだと、ただのセクハラおやじかな…。それに話す時は相手の目を見て喋った方がいいよ」
「難しい…」
「あと、褒める時は少し具体的に褒めるといいと思うよ。こんなふうに…」
私はユイの頭を優しく撫でながら言った。
「ユイはこけしみたいで可愛いね」
「あ、ありがと…」
ユイは抱えていた膝の間に顔をキュッとうずめた。
「いや、そこは『せめて日本人形みたいって言ってよ!』って突っ込む所なんだけどね」
「難しい…」
「こういうノリは確かに難しいかも。漫才とかトーク番組見て勉強するしかないね。お笑い好きな子結構多いから、話題を作る上でも役に立つと思うよ」
「うん…」
ユイは優しい子だと思った。まだ知り合って日が浅いけれど、いろんな女の子を見てきたから何となく分かる。相手の気持ちを考え過ぎて、自分の言葉が上手く出せない子。
昼休みが終わる五分前のチャイムが鳴った。渡り廊下を走っていく上履きの足音が聞こえる。
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