またその恐怖の名こそ無い

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───その昔、バーで不思議な経験をした事がある 男二人組は新しい背広、新しい靴だった。 私は興味等皆無だったが、その話には興味深い何かがあった 「最近、ダイエットしたくてさ」 片方がこう答えれば 「そんなに太ってたっけ?」 と、返す。 「太って無いけど、抑えたいの」 と、また片方が言えば 「それなら運動すればいいんじゃない?」 って返す訳だ。 噛み合わない会話の終着点は所々見えてきていた よく聞けばおかしいのだ 「食べる」が「食べさせる」となったり 「運動をすれば、逆に太る」となったり。 その、可笑しさ故に私は二人と近い席に移動していた程だ。 そして、終着点は突然、舞った 「大変だな。まあ美味いもんは程々にな」 と、言って男はグラスのウィスキーを半分呑む その時、もう一人は言った 「あれ……?食欲なんて誰が言ったっけ?」 瞬間、半分のウィスキーグラスを床に叩き落とし 隠したナイフを出そうとした男だったが 届かないっ………! 届かなかった! ダイエットの話を持ち掛けた、男の腹から怪物が飛び出して、あっという間に男は男の養分にっ……… 無念。 ぺろりっ。口の周りを舐め、男は次にコチラを見る 「おや?まだ……腹が空いてるねえ……ねえ…」 だが、私はもう喰っていた。天井まで、伸ばした手は男を一呑み、噛み潰す 残るは………汚ねえ血だけだ。馬鹿が。 しかし、思い返せば本当に不思議な経験だ。 何故、手の内を明かすのが分かりやすかったのか。 もう少し……バレぬ様出来なかったか。お互いに。 そう言えばダイエットには運動が良いらしい。 喰いたいね。 ダイエットになるぐらいにはさ ぺろ……っり
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