第01話「癲癇もちの先輩」

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第01話「癲癇もちの先輩」

 親父が死んだので、お袋の世話をするために田舎に帰ってきた。  そのお袋も昨年死んだ。なので、命日は月に二日。  件の尼僧はその日にやってくる。  これは、俺が、その尼僧の読経後の話を書きおこして採点したものである。  彼女が曰く、 『小学校のころからもう二十年以上、合気道という柔道と踊りの合いの子のようなものを習っています。  大学のときはとくに夢中になっていて、大学は京都にあったので京都に住んでいたのですが、腕がたつ高名な先生を探して弟子入りして、大阪まで通ってました。  先生についてお稽古するわけですが、あたりまえですが、そこには先輩がたもおられます。その先輩がたのうちひとりで、生まれつきてんかんをお持ちだった人がいました。彼は、 「発作があるんだ。突然くるからなにかあったら、そのときは頼むよほんと」と、苦笑いしてました。  以前、釣りの最中に発作をおこして岸壁から落ち、命が危うかったこともあったそうです。子供のころは嫌な思いもしたそうで、本人はコンプレックスなんだと話していました。でも根はとても明るいかたで、周囲には迷惑をかけるからと、よく頭を下げていました。  現代医学はすごいもので、ある日、先輩はとある大学の講演で、 「現代ではてんかんは治る病気だ」という医師の話を耳にされたそうです。  なんでも首筋の神経のなかにてんかんを引き起こしている神経があり、それを切ることで、もう絶対に起こらなくなるそうです。
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