夢のあと

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夢のあと

*** 確かにそんなことを考えていた。 もし自分がロボットになれば、世の中の煩わしいこと全てから解放されるんじゃないかと夢想していた。子どもの頃からずっと気を遣うだけの人間関係なんて嫌いで、そのくせ一人になるのは恐ろしくて、ただただ楽になりたかった。 人間の柔らかい皮膚とは似ても似つかない金属の手のひら。 化粧の必要もない白い顔。 疲れない、病気にもならない身体。 本当にこれは、わたしの欲しかったものなのだろうか。 何だか無性に泣きたくなった。泣くなんて馬鹿ばかしくて嫌いなのに、涙が出ないことがこんなにも虚しい。こんな悪夢は早く終わってほしい。もう楽したいなんて思わないから。人間関係に苦しんだって構わないから。このまま一人で部屋に閉じこもって生きていくなんて耐えられない。独りで世界から取り残されるなど、夢ですら自分には辛すぎる。 祈る神様すらいないけれど、祈るくらいしかできなかった。 助けてください。元に戻して。
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