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◆二.
――その山道は案外、走りやすかった。単調な下り坂である。もっと獣道のようなものを想像していたが、入り口を抜けてしまえば道幅も広がり、軽であれば2台が擦れ違うくらいの広さはあった。いつでもUターンは出来そうだったので、俺は安心した。
山道に入ってから、ミサキはずっと上機嫌だ。鼻歌を歌いながら、足をバタつかせている。
こんなミサキはあまり見たことがなかった。俺も黄泉平坂のことが頭を過らなければ、ミサキと同じようにこの冒険を楽しんでいたことだろう。俺もミサキもこういったイベントはわりあい好きな方だった。
相変わらず行く先は見えないが、ずっと下り坂が続いている。かれこれ、15分くらいは走っただろうか。
--何も無さそうだし、そろそろ引き返してもいいか……とミサキに相談しようと思った矢先だった。
突然、目の前にオレンジの灯りが飛び込んできた。
「おっと!」
俺は今度こそ丁寧にブレーキを踏む。
……灯りの正体は車のテールランプだった。そろり、と横に車を近づける。路肩に1台、軽自動車が止まっていた。
薄暗い中でもわかる。先端はひしゃげており、一目で事故車であることがわかった。
「ミサキ、事故車だよ」
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