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「……行きに来た時、こんな道あったかな」
「行きの時は見逃しちゃっただけじゃない? ほら、車線が反対側だったし」
あまり通りたいと思える道ではなかった。道の舗装は入口でぷっつりと途切れ、行く先には街灯の灯り1つ見当たらない。地元民の山道として最近になって切り開かれたのだろうか。
「……まぁ、疑って悪かったよ。明日になったら、母さんにでも電話して聞いてみるわ。とりあえず今来た道を戻ろう」
「えー、せっかくだから通ってみようよ」
ーー黄泉平坂。この山に伝わる伝承の名前が頭に揺らいだ。
「俺はあまり気が進まないぞ……ほら、車も汚れそうだし……」
「なに、XXX君、ビビっちゃってるの? 明日は休みなんだから最後に少しくらい冒険してみようよ、せっかくのデートだよ?」
「う……」
「もしかしたら、市街への近道かもしれないよー?」
ミサキが俺の腕を掴んでもたれ掛かってきた。表示板の僅かな光を受けて胸元のペンダントが反射し、キラリと光る。同時に、ミサキの髪から甘い匂いが漂ってきて、鼻腔をくすぐった。
「……わかったよ」
「やった! XXX君、やっぱり大好き!」
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