◆一.

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「……行きに来た時、こんな道あったかな」 「行きの時は見逃しちゃっただけじゃない? ほら、車線が反対側だったし」  あまり通りたいと思える道ではなかった。道の舗装は入口でぷっつりと途切れ、行く先には街灯の灯り1つ見当たらない。地元民の山道として最近になって切り開かれたのだろうか。 「……まぁ、疑って悪かったよ。明日になったら、母さんにでも電話して聞いてみるわ。とりあえず今来た道を戻ろう」 「えー、せっかくだから通ってみようよ」  ーー黄泉平坂。この山に伝わる伝承の名前が頭に揺らいだ。 「俺はあまり気が進まないぞ……ほら、車も汚れそうだし……」 「なに、XXX君、ビビっちゃってるの? 明日は休みなんだから最後に少しくらい冒険してみようよ、せっかくのデートだよ?」 「う……」 「もしかしたら、市街への近道かもしれないよー?」  ミサキが俺の腕を掴んでもたれ掛かってきた。表示板の僅かな光を受けて胸元のペンダントが反射し、キラリと光る。同時に、ミサキの髪から甘い匂いが漂ってきて、鼻腔をくすぐった。 「……わかったよ」 「やった! XXX君、やっぱり大好き!」     
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