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「でしょ。あたしだって、やればできる娘なんですよ」
女子高生が高笑いする。右側の女子高生もようやくスマホから目を離して、やる気の無い拍手を送った。
「ま、待て」
正面の男が、どもりながら声を出した。自ら発言するのは珍しい。四人の視線が集まる。
「――雀頭(ジャントウ)はどこだ?」
手牌は、引いた牌を含めて十二枚しかない。当然あると思われた、雀頭と呼ばれる同種の二枚の牌は見当たらない。
「あと二枚はどこに行ったんスか?」
「最初からこれくらいの枚数だったと思うんですけど」
雀卓を囲んでいた熱気が、一気に冷めた。
「どうなんの?」
右側の女子高生が、再びスマホに視線を移しながら尋ねる。
「チョンボ。満貫罰符(マンガンバップ)で、青木サンに四千点、俺と広美ちゃんに二千点ずつっスね」
「は? 見てないのが悪いんでしょ。おっさん達も払いなよ」
「そうしたいのは山々なんスけど、麻雀はルールが厳格っスから……」
おっさん二人は、勝っているにもかかわらずあたふたしている。
上がったと思い喜んでいた女子高生が、一転して不機嫌な表情に変わる。点棒入れの中から罰符を払うと、誰も上がっていないのだが彼女の残り点数は二万点を切った。
「あはは、この棒、また返ってきた」
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