テーブルゲーム麻雀

2/30
前へ
/30ページ
次へ
「でしょ。あたしだって、やればできる娘なんですよ」  女子高生が高笑いする。右側の女子高生もようやくスマホから目を離して、やる気の無い拍手を送った。 「ま、待て」  正面の男が、どもりながら声を出した。自ら発言するのは珍しい。四人の視線が集まる。 「――雀頭(ジャントウ)はどこだ?」  手牌は、引いた牌を含めて十二枚しかない。当然あると思われた、雀頭と呼ばれる同種の二枚の牌は見当たらない。 「あと二枚はどこに行ったんスか?」 「最初からこれくらいの枚数だったと思うんですけど」  雀卓を囲んでいた熱気が、一気に冷めた。 「どうなんの?」  右側の女子高生が、再びスマホに視線を移しながら尋ねる。 「チョンボ。満貫罰符(マンガンバップ)で、青木サンに四千点、俺と広美ちゃんに二千点ずつっスね」 「は? 見てないのが悪いんでしょ。おっさん達も払いなよ」 「そうしたいのは山々なんスけど、麻雀はルールが厳格っスから……」  おっさん二人は、勝っているにもかかわらずあたふたしている。  上がったと思い喜んでいた女子高生が、一転して不機嫌な表情に変わる。点棒入れの中から罰符を払うと、誰も上がっていないのだが彼女の残り点数は二万点を切った。 「あはは、この棒、また返ってきた」     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加