口にするのは恥ずかしい

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「俺は、あんたの気持ち、めちゃくちゃ嬉しいよ。わざわざ誕生日を確認して、ごちそうとケーキを内緒で用意してくれて。それに、サプライズにこんな、こんな立派な指輪まで、それもペアの……」  こみあげてくる思いが、苦しい。  こんなにも榊は、自分のことを思ってくれていた。  大好きな相手から、大事にされている。これほど、嬉しいことがあるだろうか。  百万回の『愛してる』よりも嬉しい。天にも昇る気持ちって、きっとこういうことだと思う。 「あの、せっかくなので、はめてみてもらえますか、指輪」 「先生が、はめてよ」  束縛はしたくないと言った榊がくれた、おそろいの指輪。  小さなそれに触れると、一瞬で夢がさめてしまいそうな気がして、蓬莱は右手をこわごわと突き出す。 「よかった。ピッタリですね」  左手の薬指に光る指輪を見て、榊は満足そうに微笑んでいる。 「俺にも、先生のはめさせて?」  小箱に残る、もう一つの指輪を手に取る。榊の左手を握って、指の先端に小さな輪っかを通す。 「……すげえ」  互いの薬指に光る、『しるし』を重ねあわせる。  思わず、ため息がもれる。  こんなに小さな小さなリング二つで、繋がっていることを実感する。  ともに過ごしてきた時間と密度が形として残る。その意味を考えていると、どうしようもなく目頭が熱くなってくる。
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