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こんなにも悶々としている自分は、どこかおかしいのだろうか。
特別に欲深くて浅ましい、異常な人間なのか。だから、厄介な男に目をつけられ、つけ狙われることになったのか。
他のことを考えて、気を紛らわそうとすればするほど、反対に切なくなってしまう。
うつ伏せになって、枕の真ん中に顔を埋める。
ダメだと思うのに、もう止められない。シーツに押しつけたものがじんわりと熱を帯びて、はしたなく疼きだす。
「……あッ」
知ってほしい。知られたくない。
いま、鳴上に軽蔑されたら、生きていける気がしない。
「なあ、起きてるんだろう?」
不意に、襖を叩く音がした。
瞬時にリックは全身をこわばらせた。寝返りをうって、とっさに体を丸める。火照った顔を見せたくない。でも、頭から布団に潜りこむと、さらにのぼせてしまう。
少しの間を置いて、ゆっくりと襖が開いた。ミシッと畳の軋む音がする。部屋へ入ってきた鳴上は布団の側までやってくると、その場に腰を下ろした。
「ごめん、リック。俺が意地悪しすぎた」
「……え?」
なにかの聞き間違いかと思って、のろのろと頭を出した。薄暗い部屋の中、ごく近いところに鳴上の顔がある。
リックは息をするのも忘れて、男の顔を見上げていた。
「ずっと、悶々としてるおまえを見てるのがかわいくて。つい、やりすぎた」
「ちょっと待って。それ、どういうことですか?」
「おまえよりも俺の方が、もっとエロくて、我慢強いってこと」
「え、え、ええっ?!」
勢いよく上半身を起こしつつ、わずかに後ずさる。
「いろいろ我慢できなくなったおまえが、顔を赤くして俺におねだりするのが見たかった」
「……ひどくないですか、それ」
「そうだよ。俺は、特別にひどい男だし?」
「あんまりです、翡翠さぁん」
リックが涙目で訴えるも、鳴上はあくまで涼しい顔を崩さない。
「これも躾の一環だ」
「だからって、ぼくがモヤモヤしてるのを見て喜ぶなんて。ひどいですよぅ」
「どうやって、おまえを仕込もうが俺の勝手だ。ペットの躾は飼い主の責任だろう?」
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