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ペットと言われて、ああそうか、と腑に落ちた。
「嫌なのか?」
「いやじゃ、ないけど」
リックは、鳴上にとっての『特別ななにか』になりたかった。
ただの居候じゃない。同居人でもない。恋人だと言い張る自信もない。かといって、なんの役にも立っていない。
ペットくらいがちょうどいい。気まぐれに撫でられて、かわいがってもらえれば十分だ。
ペットだったら尻尾を振って抱きつくのに、理由なんて要らない。ただの愛玩動物。それでいい。
「安心しろ、リック。おまえが欲しかったのは、俺も同じだよ。たっぷり我慢したほうが、気持ちよくイけるだろう」
「へんたいぃ……」
鳴上の腕が伸びて、しっかりと肩を抱きこまれる。
生身の体が持つぬくもりと、硬い筋肉の確かな存在感に触れて、深々と息を吐く。
「かわいそうにな。おまえは、その変態につかまって、たっぷりと『しつけ』られたいんだろう?」
四肢をきつくホールドされたまま、耳の孔を舐めあげられる。濡れた舌がクチュクチュと皮膚の薄いところを責める。
くすぐったい。体の奥から、得体のしれないなにかが刻一刻とせり上がってくる。なのに、締めつけられて身動き取れない。
「あぁ、ン、ああァン……」
「目がとろんとして、すごいエロい顔になってる。いまなら、なにされてもいいっていう顔」
鳴上の声は麻薬だ。リックの脳のすべてを、一瞬で支配する。
「はぁ、んっ……しつけて、くださいぃ……」
「本当に素質あるよ、おまえ」
鳴上は満足そうに喉を鳴らして笑った。
「で? リックは俺にどうして欲しいんだ?」
「や、そんな、いじわる、しないで」
「口に出して言わないとわからないだろう?」
「……抱いて、ください」
口をついて出た言葉に、自分で驚いた。
こんなに簡単に本心を引き出すなんて、やっぱり催眠術なんじゃないかとリックは思った。
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