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「いいね。その顔で言われたら、うんとひどいことしたくなる」
「ひどい、こと?……あッ、んうぅ」
唇が触れ合う。乾燥で少しかさついた表面を一舐めされる。と思う間もなく、一気に吸いあげられていた。
ざらついた舌が口の中へ侵入して暴れだす。派手な水音が羞恥を誘う。それですらも感じ入ってしまう。
「かわいいよ。このまま、食べたいくらい」
鳴上の唇が離れた頃には、リックの体は骨が溶けたようになっていた。体に力が入らない。支えなしでは座っていられない。
「いい、です。ぼくは、翡翠さんが、好きだから」
あなたが望むなら、なにをされてもいい、と歌っていたのは誰だっただろう。沸騰した脳ではろくに思い出せない。
でも、いまならわかる。
好きな人にはなんでもしたい。なんでもされたい。
身も心も所有したいし、所有されたいというのは、こういう気持ちなのだと実感する。
「……アッ、ンンッ」
寝間着代わりのスウェットをめくられて、下から脱がされる。協力するように心持ち腰を浮かせる。
服の脱ぎ着なんて自分でできる。でも、身の回りのことがなに一つ満足にできない赤ん坊みたいに扱われる。それが嬉しい。
全部をあずけて、全部をゆだねる。つまらない自我なんて要らない。
「リックはどこもかしこもスベスベで、気持ちいい」
一枚残らず脱ぎ捨てる。剥き出しの生身のまま、横向きの姿勢で向かいあう。
肌と肌が直に触れるだけで、言葉にできないくらいの充足感に満たされる。
背骨の連なりを撫でていた手が降りてくる。臀部の丸みを捏ねられ、心拍数が一気に速くなる。その先の行為を予感して、リックの体がビクリと震える。
鳴上の指が、とうに漲っている性器に絡められる。自分のものではない手にゆるゆると扱かれる。
少し痛くて、少し物足りない。なんともいえないもどかしさに、思わず腰をねじって逃れようとすると、低い声で囁かれた。
「ここ、自分でした?」
「え、あ、……はい」
「こっちも弄った?」
「っ……」
骨ばった中指が奥へと差しこまれ、閉じたままの後庭をまさぐられる。
「したんでしょ? 嘘なんかついても、すぐにわかる。体に聞けばいい」
眠れる蕾をつつかれる。まだ硬いそこが官能の疼きを思い出すのを感じて、リックは目を閉じながら白状していた。
「……しました」
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