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不本意な出会い方をして、どれだけの時間が経っただろう。同じだけの時を過ごしてきたはずなのに、榊は変わらない。短くなったのは髪だけで、涼し気な容貌は褪せるどころか、さらに妖艶さを増している気がする。
「もっ、ぉ……」
「なに? これが欲しいの? どうして欲しい?」
大きくそり返った雄蕊で入口をつつくと、榊は息もたえだえに訴えた。
「もっと、いっぱい……うしろから、して」
「こうやって?」
右手の怪我に注意しながら、榊の裸体を裏返す。尻を持ち上げて、脇から手をまわして屹立を握ると、背中を弓なりにそらしてのけぞった。
「足りないなら、いくらでもしてやるよ」
滑りすぎた入口に拒まれそうになりながら、再び結合を果たす。先端を含んだ瞬間、吸引されるように引きずりこまれた。熟れた媚肉にしゃぶるように包みこまれる。
貪欲な秘孔は、内側の欠落を埋めるかのように雄渾を求めている。
「あ、ン、あァ、ッンン!」
肉のぶつかり合う音を、蓬莱はどこか残酷な気持ちで聞きながら、責め続けた。
好きなのに、いじめたくなる。
好きだから、いじめたくなる。
縦横にうねる背中を撫で、汗ばんだ臀部の柔肉を鷲掴みにして、秘められた内奥を暴く。
酷いことをしたい。羞恥と痛苦に煩悶しながら、乱れに乱れて悦ぶ姿を見たい。
「こうやって、うしろから犯されるの、好きか?」
「ぅ、ン……」
「言えよ、時雨」
双丘を両手で開いて、腰を割りこませ、最奥を責め抜く。
抉るように蹂躙する度に、過剰なローションがあふれて滴り落ちる。ぬめりをすくいとって、内腿に塗りつける。濡れた手のひらで垂れ下がった膨らみに触れると、榊は甲高い嬌声をこぼして震えた。
首だけをまわして、背後の蓬莱を振り返る。色に濡れた瞳が細められる。
「ぁあ、ぅ、好き……それ、いい。はあっ。もっと、めちゃくちゃに、して……」
底なしの泥沼じみた、愛慾のぬかるみに溺れていく。
二人でどこまでも堕ちていく。
榊は全身が性感帯のようだった。素肌の触れる場所、どこもかしこも感じて感じてしかたないという風に、腰をねじって感極まって身悶えしている。
「奥に、出すぞ」
「はあっ、あっ、んうぅ……」
妖艶に喘ぎ続ける榊は、聞こえているのかいないのか。頬をシーツに押し当てて、手足をまっすぐに伸ばし、深く繋がっている後孔を差し出すようにして震えている。
すべてを許されている気がした。
壊れるほど強く、底へ叩きつけるように激しい抽送を繰り返す。
内襞が擦れる。凹凸の感触を味わいながら、一突きごとに頂点へと向かっていく。
イきたい。出したい。放出したい。
いま捕らえているこの体に、思いの丈すべてを植え付けたい。
「ん、んッ……!」
「……ぁああッ」
蓬莱が解き放ったのを受けて、榊も絶頂を迎えた。
圧死するんじゃないかと思うほど中を強烈に締めつけられて、蓬莱は低く呻いた。
体中を流れる互いの血液の音が聞こえるようだった。
折り重なるようにシーツの上に沈み、荒い息を吐いた。
最高の気分だった。
汗で湿った体を密着させたまま、満たされた思いで、しばらく放心していた。
「あいしてます……」
声にならない空気の振動を聞き取って、蓬莱は笑った。
わかってる。
こんなに愛おしい存在は、他にない。
手放したりしない。縛りつけてでも、そばに置いておく。
これはもう、永遠に自分のものだから。
~終幕~
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