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「もうこんな時間か。日付越えてたな」
リックがぼんやりしている間に、汚れた下肢を丁寧に拭われていた。
「大丈夫、ですか。翡翠さんは、明日も朝、早いのに」
手をついて体を起こすと、先まで繋がっていたところが痛んだが、顔を伏せてやり過ごす。
擦られすぎたところが腫れぼったくて敏感になっている。まだ中に入っているような気がして、リックは小さく身震いした。
「そんなに年寄り扱いするなって。俺だって、このくらい平気だから。リックのほうこそ痛いところは?」
「大丈夫、です。大学は、ちょうど試験休みだし」
「そうか。まあ、ゆっくり寝てられるな」
「あ、待って。つッ……」
立ち上がろうとして、電撃のような疼痛が走る。裂けてはいないはずだが、無理に広げられたそこはズキズキした痛みで主張してくる。
「どうした? やっぱり、無理させすぎたな。悪かった」
「違うんです。そうじゃなくて、その、これを……」
ゆっくりと手を伸ばしてカバンをつかみ、中から百貨店のロゴが入った紙袋を取り出して手渡した。
「どうしたんだ、これ」
「あの、翡翠さんにはいつもお世話になってるから、バレンタインのプレゼントに」
「俺にくれるの? 開けていい?」
「あ、はい。チョコレートよりも、こっちのほうがいいかと思って」
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