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サンエイ警備の業務は、大まかに三部門に分かれる。
いま蓬莱が所属している、商業ビルや博物館やコンサート会場などに派遣される、一般警備部門。
護衛やボディガードとして特定の人物に張りつく、特殊警護部門。
一般家庭や企業に防犯システムを売りこむ、防犯部門。
なにかと人手が不足しがちな警護部門へ移籍して欲しいという話を、蓬莱は即座に一蹴した。
「杉原さんは知ってるでしょう。俺がいままで、どんなことして、どういう人生送ってきたか」
堕ちるところまで堕ちたという自覚はある。
いま、こうして普通の社会人をしているほうが不思議なくらいだ。
「だからこその、チャンスだとは思えないか。過去は無視できないが、一生とらわれるもんでもない。おまえの気持ち一つで乗り越えていけるはずだ」
蓬莱は思わず漏れそうになる欠伸を噛み殺す。この事務所へ来てから今日まで、なにくれとなく世話を焼いてくれる杉原相手に不遜な態度は取れない。
しかし、睡眠不足には勝てない。
昨晩の榊は、いつにもまして激しかった。
己の欲望に忠実で、奔放なところのある恋人のあられもない姿態を思い出しそうになる。
蓬莱はあわてて左手の甲に食いこむほど、きつく爪を立て、痛みで気をそらした。
こんな場所でうっかり想起してしまえば、椅子から立ち上がれなくなってしまう。
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