ペットの躾は飼い主の責任

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ペットの躾は飼い主の責任

 喫茶店J℃(ジェイド)のマスター、鳴上翡翠は怒らない。 「どうして、そんな風に怒らないでいられるの?」  と、リックが尋ねたら、鳴上は箸を握る手を止め、小さく肩をすくめて笑った。 「べつに、怒らないわけじゃない。ただ、大抵のことは、そんなに大騒ぎすることじゃないと思うだけだ」 「でも、怒りたくなることだってあるでしょう?」 「そうだな。リックも、俺の年になればわかるんじゃないか」  そう言って、かわされてしまった。年齢の話を持ち出されてしまえば、リックには手も足も出ない。 「どうせ、ぼくは子どもですよ」  味噌汁のお椀を持ったまま、口を尖らせる。  二十の年の差は大きい。親子といっても通用する。鳴上がリックを甘やかす顔は保護者めいている時があり、どうにも悔しくなる。どれだけ背伸びをしても追いつけないのだと思い知る。 「本当に子どもなのか? だったら、子どもと寝た俺は、立派な犯罪者になるな」 「……子どもじゃない。けど、子どもっぽいとは思ってるでしょう?」 「子どもっぽいとは思ってない。かわいいとは思ってるけど」  厚い手のひらで頭頂部を撫でられ、グリグリといじられる。 「その、かわいいってのも微妙なんだよ」 『かわいい』と言われることは好きじゃない。馬鹿にされているとまでは思わないが、あまり嬉しい表現ではない。  自分が、特別に素直じゃない人間なだけかもしれないが。 「気にするな。俺が勝手に思ってるだけだ。リックはそのままでいいんだ」 「そのまま、ねえ」  それが目下のところ、一番の問題なのだ。 「そういえば、なにか俺に相談があるって言ってなかったか」
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