~白日のイタズラ~

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~白日のイタズラ~

「これ、どうしたんですか?」  リックは何度もまばたきをして、鳴上の顔を見つめる。  夕食のおろしハンバーグを食べ終えたあとで、食後のお茶と一緒に、赤いリボンがかけられた小箱を差し出した。 「なにって、ホワイトデーのお返し。リックの手袋ほど、素敵なプレゼントを用意できなくて悪かったけど」 「いえ、いいんです。そんな、気にしないでください。開けてもいいですか?」 「もちろん。口に合うといいんだけど」  いそいそと包装紙を剥がすリックは小動物めいていて、正面に座る鳴上は、眺めているだけで自然と目を細めてしまう。 「チョコレート?」  箱の中には、宝石のように美しく、光沢のあるショコラが並んでいる。 「そう。いろいろあるから、試してみて」  鳴上が勧めると、リックはとたんに顔を綻ばせた。 「これ、ぼくが食べてみたかったお店のです。どうして、わかったんですか?」 「好きな子が考えることくらい、わかるんだよ」  いたずらっぽく微笑むと、目を丸くする姿も愛らしい。  なんということはない。夜更けにやっていたテレビ番組のスイーツ特集で、リックが食い入るように見ていたのを、うしろから覗きこんだだけなのだが。 「食べてみても、いいですか?」 「もちろん」  真っ赤なセロファンを剥いて、中から出てきた艷やかな一粒のチョコレートを指でつまんで口元へ運ぶ。  当たり前の仕草なのに、どこか色めいて見えるから不思議だ。
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