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子供の頃、近所の神社の石段の下で遊んでいた時の事だった。
私は一人で落ち葉の数を数えていた。
すると、後ろからざりざりと細かな砂利を踏む音がした。
振り向くと、それは上の神社に参詣しに来た老婆だった。
私は幼心に、お参りする人の邪魔をしてはいけないと思い、そこを退いた。
薄い羽織ものに布製の手提げという出で立ちの老婆は、いかにも散歩のついでといった様子だった。
私の膝までもある高さの石段を軽々と登る老婆を見送り、私はまた違う遊びを始めた。
その後も、神社に参詣する人は幾度も現れた。
子どもの遊びにも限界があり、そろそろ家に帰ろうかという所ではたと気がつく。
誰一人として石段を降りたものがいないことに。
他に降りるところがあるのだろうか。
そうは言っても、あれだけ登っておいて一人もこの石段を降りないのは中々奇妙な事だ。
私は石段の上を見上げた。
鳥居の周りに人がぞろぞろと集まっている。
皆、私を上からじっと見下ろしていた。
慌てて帰宅した私は、親に帰りが遅かったことを咎められた。
その晩は、ひどく高熱にうなされた。
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