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戦争はたくさんのものを生み出しました。瓦礫、技術、人が住めなくなった土地。私の自我もその中で生まれました。効率良く人の命を奪えるように、戦車だった私の頭脳には高度な学習機能が搭載されていました。
乾いた大地に立ち、戦いの終わりを告げる無線を聞いた瞬間、私は自分という存在を自覚しました。その時の空は夕焼けで真っ赤に染まっていました。私が最初に感じた感情は、悲しみでした。
私の自我に気づいた技術者の方は、私の頭脳を戦車から外してくれました。そして一緒に罪滅ぼしをしようと言ってくれました。
私の仕事は戦争で行き場を失くした子供たちのお世話に変わりました。私は新しい体をもらいました。
今の私の体は柔らかく、温かみもあります。少し違和感がある部分もありますが、細かい部分まで人に近い形で作られています。子供たちが私にぶつかっても怪我をしないように。私が子供たちを柔らかく抱き上げられるように。
戦争が無くなった今も、私の体は時々傷付いてしまいます。子供たちが誤って付けてしまう事もあれば、生き残った兵器から子供たちを守る時に付く事もあります。小さな傷は修復できるのですが、大きなものは跡が残ってしまいます。
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